アニメ廃人あやみ卍

家で一生アニメ廃するために生きる毒女のブログ

【訃報】野原ひろしは日本を代表するお父さん像でした


藤原さんといえば、真っ先に代表作としてあげられるのが『クレヨンしんちゃん』の野原ひろし役ですよね。
1992年の放送開始から病気療養に入る2016年8月までの24年間、野原一家の大黒柱を演じています。
知らない人はいないんじゃないかというくらい、有名な存在ですよね。


原作コミックは全50巻、累計5400万部を超えるベストセラーになりました。
もちろん私も「クレヨンしんちゃん」が大大大好きです。
いまでは国民的な漫画・アニメ作品となったが、もともとは双葉社の青年雑誌「漫画アクション」の連載作品で、実は当初は“大人向け”のネタが多かったんです笑


92年からテレビ朝日系列でテレビアニメ化されたが、主人公の幼稚園児・野原しんのすけが繰り出すギャグは「子どもが真似をする」と批判され、実は「子どもに見せたくないアニメ」の代表にあげられることが多かったんです笑


一方で、アニメは放送開始から30年目の節目も近い今もなお続く長寿番組となっており、国民的アニメとして認識されるようになりました。


賛否両論、はあるものの、世代を超えて愛されている作品であることは間違いないですよね。
そのきっかけの一つが、2001年公開の劇場作品『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』だと思う。


『オトナ帝国の逆襲』という名作

「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」 予告編


『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』は、『クレヨンしんちゃん』にとって9作目、21世紀最初の劇場作品です。


あらすじ

舞台は埼玉・春日部に生まれたテーマパーク「20世紀博」。21世紀を迎えるにあたり、20世紀をふり返るもの。高度経済成長期のテレビ番組や流行などが再現され、1970年の大阪万博を彷彿とさせるものだった。


「20世紀博」には昭和のノスタルジーを想起させる「匂い」が満ちていた。藤原さん演じる野原ひろし、妻・みさえをはじめ、大人たちは懐かしい「匂い」に洗脳され、過去の良き思い出にしがみつこうと童心に帰ってしまう。


大人たちは仕事を捨て、家族を捨て、「20世紀博」の中にこもった。すべては秘密結社「イエスタディ・ワンス・モア」による陰謀だった。


事態を受けて、主人公・しんのすけをはじめとする子どもたち「かすかべ防衛隊」は、両親を奪還すべく「20世紀博」に突入。時の流れを巻き戻し、世界を20世紀のまま止めようとする「イエスタディ・ワンス・モア」と対峙する……


という映画というよりはもうドラマですね笑


お気づきのように、大人たちは20世紀という「過去」、子どもたちは21世紀という「未来」の象徴です。
そして子どもたちは、大人たちの洗脳を解き、未だ見ぬ「未来」を取り戻す……という構図になっている。


『オトナ帝国の逆襲』の劇中で象徴的なシーンの一つが、ひろしが童心の記憶から我に返り、息子・しんのすけのことを思い出すシーンです(下に動画あり


ひろしは、1970年の大阪万博を訪れた少年時代の記憶の中に囚われていました。
そこでしんのすけは、ひろしの「父」としての記憶を取り戻すために、ひろしの「靴」の匂いを、ひろし自身に嗅がせました。


『クレヨンしんちゃん』において「ひろしの靴」は、ひろしの強烈な「足の匂い」を象徴するギャグの装置としてたびたび登場してきていますよね。
だが、この『オトナ帝国の逆襲』において「ひろしの靴」の役割は、ギャグの要素をこえています。


「父ちゃんは、父ちゃんなんだよ。この匂いわかるでしょ?」


しんのすけにこう言われ、ひろしは自らの靴の匂いを嗅がされる。
そこから始まるのは、35年にわたる「野原ひろし」の半生を回想するシーンです。


父の自転車の後ろに乗り、釣りに出かけた幼少期。高校を卒業して秋田から上京し就職。妻・みさえとの出会い。長男しんのすけ、長女ひまわりの誕生。


スーツに革靴、満員電車に揺られて毎日会社に向かい、外回りに汗を流す。家のローンを抱えながら愛する妻・息子・娘・ペットの犬(シロ)のため懸命に働く。靴には日々の汗と匂いが染み込んでいる。


最後に思い出すのは、家族そろって出かける回想だ。かつて自分が父にしてもらったように、釣り竿を片手に息子・しんのすけを自転車に乗せていた。


親から子へと人生はつながっています。ひろしは靴の匂いからそのことを思い出す。夫として、父として、「現在」の野原ひろしという人間を象徴するものが「ひろしの靴」であり「ひろしの足の匂い」だった。


回想の終わりに、しんのすけは問いかける。


「父ちゃん…オラがわかる?」


「あぁ…あぁ…!」


ひろしは嗚咽しながら、しんのすけを抱きしめた。こうして野原一家は、「現在」を取り戻し、「未来」という可能性を手に入れることができた。


約3分間にわたるひろしの回想は『クレヨンしんちゃん』の30年近い歴史の中でも屈指の名シーンです。何回見ても泣けます。

ひろし泣ける名シーン!
このシーンは今見ても心が痛いです。
ひろしを大好きになった一つのシーンですよね。
子供の視点、大人の視点から楽しめる作品でした。
そんな役を演じた藤原啓治さん、だいすきでした。
天国でもお元気で。